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港も見える丘から

人生のゴールデンエイジにふと感じることを綴っていきます

NO.123 クリスマスおめでとう 星のかんむり 谷村みよ子


クリスマスおめでとうございます。
わたしの大好きな作家松谷みよ子さんの「星のかんむり」のお話を書きます。


イギリス、ロンドンに住むブラウンさんという大金持ちのおじいさんが亡くなりました。
教会や、貧しいひとたちのための施設や病院に、
いつもたくさんの献金をしていた名士のおじいさんでした。
おじいさんはひとりの天使に連れられて天国にいく途中、いろいろ考えていました。
「きっと神様から星がたくさんついた冠をもらえるに違いない。
献金もたくさんしたし、学校への寄付もしたし、教会を一度も休んだことはないし、
勉強だって仕事だってなまけたことはないのだから、一番すごい冠をもらえるだろう」
これまでやってきたことを思い起こして満足でした。
すると天国の門につきました。なんだこんなところなのか。
天国はもっとすごいところだと思ったのに、とあたりに青い星と雲しかない門を見てがっくりしました。
門の中からピカピカ光るきれいな冠をつけた天使が
ひとつだけ星のついた冠をもって出てきました。
「おお、マリアさまですな」とブラウンさんがさけぶと、
「いえ、とんでもない、私はルツですよ」と天使が言います。
「この冠をおかぶりください」
「ええ?去年の大晦日になくなったルツなのか」
びっくりするブラウンさんにルツははいと答えました。
「なんでお前の冠にはたくさん星がついているのに、
わしの冠にはひとつしかないのか」

不服そうに言うブラウンさんに最初の天使が言います。
「どうしてなのか説明しましょう」そしてルツのお話しが始まりました。
ルツは教会の入り口に捨てられていたのをブラウンさんに拾われて、
お屋敷で働いていましたが、心のやさしい娘でした。
どんなにつらいことがあっても、神様への感謝を忘れず、
いつも他の人のことを考えていまいした。
けがした子雀をいっしょうけんめい看病したり、
病気のお母さんをかかえた郵便配達の少年の妹になって励ましたり、
神経痛で困っているおばあさんの孫娘になってお世話をしたり、
娘を亡くして泣いてばかりいる絵描きさんの娘の代わりになって支えになってあげたり、
足の障害をもった女の子のお友達になったり、
仕事の合間にこっそりとよいことをしていました。
でも、いつも怒られてばかりです、どこに行っていたの!仕事をさぼっているんだね。
教会にもいかないでどこをほっつき歩いているんだと、
みんなは誰もルツのしていることを知りません。
知っているは神様だけでした。
屋根裏部屋でどれだけルツが祈っていたか、それを知っているのも神様だけでした。

天使の話を聞いて「なるほど、ルツはやさしい子だ」とブラウンさんも認めました。
「しかし、聖書の教えにしたがって、私はたくさんの献金をしてきました。
わたしのおかげでたくさんの人を幸せにしてきました。ルツの何倍もね」
とブラウンさんは言います。
「あなたはお金持ちです。そのお金の中から献金をしてこられ、
世の中の人から尊敬され、感謝され、よりお金もちになれました。
あなたはこの地上でもう十分によい行いへのご褒美をいただきましたね。
それに比べるとルツさんは少しも人からほめられようという気はなく、
ただ神様を喜ばせたいと思っていました。
人でなく、神様がルツさんのよい行いをほめてくださいました。
だから星がたくさんついています。」
「よくわかりました。わたしは正しい、立派な人間だとうぬぼれ、
神様からたくさんのご褒美をいただけるものと思っていました。
いつでも人からほめられたくて、そればかり考えていました。
いやしい私は星などいただくねうちもありません。この冠をお返しします。」
そう言って冠を返そうとすると天使はそれをとめて
「ブラウンさん、その冠はかぶっていらっしゃい。
せっかく神様があなたのためにくださったものです。」と言いました。
なぜかわからないブラウンさんに天使は
去年のクリスマスにしたことを話してくれました。
神様が喜ばれる良い行いというものは、自分は忘れているものなのです。

クリスマスの日にブラウンさんはホームレスになってしまったかつてのお友達に食べさせ、着物を与え、仕事の世話までしてあげたのでした。
愛から出た行いでした。そのことを神様は記録していました。
そして冠にひとつの星をくださいました。
「神様はまったく公平でいらっしゃる。神様のなさることにはまちがいはない」
ブラウンさんはひざまずいて
「わたしはこのひとつの星をありがたくちょうだいします」と言いました。
そのときバーンを花火のような音がしました。
「ごらんなさい。またひとつ星がうまれましたよ」天使が言いました
「地上のどこかで、誰かが隣人に愛の行いをするとき星がうまれます。
毎日星が生まれるから宇宙はこんなに美しいのです」
こうしてブラウンさんはルツさんに手をひかれて天国の門を通っていきました。




誰かがどこかで、こっそりと本当に小さな良い行いをするとき、
宇宙のどこかで星がうまれます。
褒められようとか、お返しをほしがったりする良いことを神様は喜ばないけれど、
だれも知らないでする良い行いをしたときに星が生まれるので、
あんなに、きらきらと輝くのですね。

わたしは子どもの時からずっと、このお話が大好きでした。
良いクリスマスをお過ごしください。