港も見える丘から

人生のゴールデンエイジにふと感じることを綴っていきます

NO.137 耳が痛い話し…と月夜のノクターン

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ピアニストの久元祐子さんのブログをいつも楽しみにしています。
先日は“ショパン@なんば”というテーマのブログで、
YAMAHAなんば店サロンでのショパン講座のことを書かれていました。
ショパンの愛した楽器プレイエル、その柔らかなピアニッシモ
ふわりと残響が残るまろやかな切り口を、
現代のピアノにどう翻訳していくかなどを
演奏を交えてお話してくださるなんて
夢のような講座で、近くなら飛んでゆきたいと思いました。

 

f:id:tw101:20170307202709j:image(プレイエル)

 

さて、そこでのエピソードです。
繊細な音色のお話をするので、サロンの中では
マイクを使いたくないと準備したところ、
後ろの方から声が聞こえないのでマイクを使うことになりました。

祐子さんのお許しをいただき、
ブログを引用させていただきます。

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態度が大きいのに、私の声は小さい、、(泣)ということでしょう。諦めてスタッフの方が用意してくださったマイクを使って話し始め、ピアニッシモの魅力、ディミニュエンドの消え入るようなニュアンス、ため息のモチーフなど弱音アプローチを展開していきました。現代のピアノはフォルテッシモやマルカートを得意とする楽器ですから、そこからピアニッシモやレガートを引き出すには「技術」が必要になってくるからです。

そうこうするうちに、皆さんの耳が弱音に慣れていかれたようなのです。マイクが全く必要なくなりました。
音量というものは、「慣れ」の要素が多く、騒音の中にいると大きな声でなければ聞こえませんし、耳鳴りがするほどの静寂の中では小さな木々のそよぎでさえも聞き逃すことはありません。

光もスピードもそうです。闇に目が慣れてくると先が見えてきたり、高速道路から一般道に降りたとき、速いスピードに慣れてしまって速度を落とせなかったり・・・。

現代は、大きな音に耳が鳴れている時代です。電気がない時代の"蝋燭と月明りの夜"に想いを馳せ、ショパンの「デリカティッシモ」に近づいていきたいと思ったひとときでした。
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日頃感じている思いが、すっきり美しい言葉で表現された
気持ちよさです。

今、耳をすませてみればこうしていると ゴーンという本覚寺さんの
時を知らせる鐘の音がします。

空高く飛ぶジェット機の音も、電車の音もします。
ここでは、汽笛も聞こえる時もあります。

朝には小鳥の声、風のそよぐ音、雨音、

都会でも身の回りには
いろいろな自然の音が聞こえます。

ところが、外に出て、たとえば、駅の近くに行くと、
あちこちから、電子音が聞こえてきます。
電車やバスにのれば、次の停車駅の案内や
注意喚起のアナウンスがひっきりなしに流れます。
隣り合わせのお店が、大音量で異なる音楽を流す
ファッションビルや、
ドアが空いた途端、はじける玉と電子音楽が飛び出してくるパチンコ店、
どこに行っても、音が溢れ、雑音になっています。
だから、みんな、イヤホンをかけ、自分の音だけ聞いているのでしょうか。

 

私は左の耳の構造がちょっと違うみたいで、
子どものときから、音に敏感、というか、
大きな音が怖くてたまりませんでした。

一番嫌いなのは雷の音。
恐怖で箪笥の中で耳を塞いでいました。
花火も音が怖くて苦手。遠くで見るだけ。
運動会のヨーイドンの空砲は身体が固まってしまうほど。
お風呂屋さんのカーンという桶の音が
耳に突き刺さり
室内プールのワンワンワンとする音も苦手。

大きな音が嫌いだったので、
多感な時期もロックを聞かなかったと
後になって気づきました。


静寂は無音ではありません。
虫の鳴き声を「声」として認識できるのは
日本人とポリネシア人だけだそうです。
それは右脳と左脳の違いで、
虫の音を西洋人が音楽脳である右脳で処理するのに対し、
日本人は言語脳の左脳で受け止めると、
東京医科歯科大学の角田教授が実験で突き止めたそうです。

脳の違い、耳の構造の違いで、

また、年齢の違いで、
同じ音も個人差が出てくるものなのでしょう。

 

雑踏の中で、雑音に慣れてしまうと、
かすかな音など聞こえない耳になっていきます。
聞かないように自分を訓練してしまうこともできます。

 

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〈現代は、大きな音に耳が鳴れている時代です。電気がない時代の"蝋燭と月明りの夜"に想いを馳せ、ショパンの「デリカティッシモ」に近づいていきたいと思ったひとときでした〉

蝋燭と月明かりの夜、繊細かつ優美な
ショパンノクターン全曲を聴いてみたいと思いました。

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(しぇあひるずヨコハマから)