港も見える丘から

人生のゴールデンエイジにふと感じることを綴っていきます

NO.139 君はどこにいるの

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「君はどこいるの」

時は昭和39年、東京オリンピックを控え、
右肩上がりで沸き立っている時代。
妻に先立たれ作家の藤沢省二郎は、
すみ慣れた邸宅を売り払い、

鎌倉にこじんまりとした平屋に移り住みました。

一人娘のみことお手伝いのきよと3人が暮らしていくには十分でしたが、
大きな家を手放したわりには、多額な税金がかけられ、
手元の現金が少なく、省二郎は気がおさまりません。
相続税、不動産所得税、固定資産税、そこに延滞手数料まで乗り、
愛国心がなくなった」と大げさに騒ぐ省二郎でした。
実は一人娘のみこの行く末が案じてならない省二郎は
少しでも財産を残せるように考えていたのでした。
みこは戦時中軍需工場へ駆り出され、栄養失調と過労で身体を壊し、
腎臓を片方摘出してしいました。
疲れやすく、結婚も覚束ない状態でした。
自分への父親の思いを知っているみこは、つとめて明るく振る舞い、
憎まれ口を叩き、自分の弱さを決して見せないようにしていました。

ある日、「作家と娘」という取材に訪れた女流カメラマンの
活き活きとした姿を見て、自分の身と比べたみこは取材を拒否し、
父親を困らせましたが、みこの良き理解者きよは、
省二郎にみこの気持ちを伝えようとしますが、
すぐには呑み込めない父親でした。
本当の自分はどこにあるのかしらと自問自答するミコ。

入浴中に女性からの電話に慌てて出るだけでなく、

有頂天で、大はしゃぎする父親を見て、複雑な思いを持ちました。

2年前に妻をなくした省二郎は、旅先で出会った女性を愛するようになり、
彼女の離婚が成立したので、再婚すると言い出しました。
お相手の高野冴はみこと同じ年です。
冴は省二郎のプロポーズを受け入れますが、同居はしないと宣言します。
みこいる家から朝来て、夜帰る「妻問い婚」を主張して譲りません。
仕方なく原稿用紙を抱え、省二郎は鎌倉から東京へ通うという結婚生活が
始まりました。
帰る電車が一本ずつ遅くなって来ました。
寒い冬の日も終電で帰る父親を、玄関で待つみこ。
彼女の身体は次第に弱っていきました。
お互い距離を置きながらも気遣いあうみこと冴。

 

父親を冴が本当の幸せを築くために、自分も積極的に生きたいと思い、

阿波踊りを踊ってみせるミコ、

心臓に負担がかかり、その場で倒れてしまいました。

 

娘と若い妻、どちらも大切で愛する省二郎でしたが、
みこの、その命の灯火が消えてしまったとき、
深い慟哭の中で冴を遠ざけていました。
あの戦争さえなければ… みこは元気でいられたのに…
みこ、もう一度、あの憎まれ口を叩いておくれ、
みこ、どこにいるんだ、
省二郎の慟哭…
主をなくした部屋にポツンと置かれた
みこの揺り椅子が揺れ、
私の青空」が流れてきました。

 

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昭和39年… 私は8歳でした。
東京オリンピックの前で全てが輝いていました。
傷痍軍人の姿が街から消えていき、
防空壕跡などの戦争の傷跡が消され、
大人たちは明るい未来を夢見ていました。
子どももはしゃぎ回っていました。

訳もわからずに。

 

 

昭和3年生まれの母は鶴見の軍需工場で青春を過ごしました。

ミコさんは昭和4年か5年の生まれという設定とお聞きし、
母と重なりました。

青春を返してほしいとよく言っていた母…

母の死後、すぐに再婚を決めた父、
まだ42歳だったのだから、仕方ないと思いましたが、
母が存命だった時からの交際相手との結婚に
私は許せない思いでいっぱいで、
「あなたの結婚相手としては認めるけれど、
母親としては認めない」と言い放った18歳の自分を思い出しました。

家族とはなんだろうと思います。
私の思い描いていた家族作りは、夢に終わりました。

君はどこにいるの…?
私はどこにいるの…?

すーと涙が流れて、そっと拭ったいわきの夜でした。

 

 https://youtu.be/59bnXW280lE