港も見える丘から

人生のゴールデンエイジにふと感じることを綴っていきます

NO.171 元気の出る《アンの青春》

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「人生には、もっとがっかりするようなことが何度もあるよ」

マリラはアンを慰めるつもりで言った。

「あんたはひとたびこうと思い込んで、それが思い通りにならないと、がっかりしてしゅんとなる、こんなとこはちっとも成長しないね」

「そうね、そうなりがちね」アンも悲しそうに認めた。

「すてきなことがおきそうだと思うと、わくわくして期待の翼にのって高く舞い上がって、はっと気づくと、どしんと地面に落ちているの。

でもね、舞い上がっているときは本当にすばらしい心地よ…

夕焼け空をすうっと翼を広げて飛んでいくような気持ち。

後でどしんと墜落しても価値はあるくらい」

「そうだね。そうかもしれないね」マリラも認めた。

「私なら淡々と地べたを歩くほうがいいがね、舞いあがったり落ち込んだりしないで。でも、人それぞれ生き方があるからね…」

(引用 文春文庫『アンの青春』 松本侑子新訳より)


COVID-19の影響でついに小中学校に休校の要請が出ました。

来週卒園式を迎えるはずの孫娘、

1年間卒業委員として心を尽くしてきたママの落胆は

私の想像以上だと思います。

 

私もイベント延期決断のあと、

珍しくやる気が失せてしまいました。

 

 


その上、SNSの情報ばかりみていると気が滅入って

免疫力が低下してしまいそうで、本ばかり読んでいました。

 

2009年と2014年、私はプリンス・エドワード島を訪れました。

私にとっての「聖地」です。

村岡花子先生の翻訳が有名ですが、

今、現在、「赤毛のアン」の完全訳に取り組まれている

松本侑子さんと二回とも、ご一緒のすてきな旅でした。

 

 

f:id:tw101:20200229111946j:image アンの部屋 

 

 


ご存知「赤毛のアン」原題“Anne of Green Gables”は

孤児だったアンがマシューとマリラの兄妹の家族として愛を知り、

腹心の友ダイアナと共に成長していく物語で、

最悪のマシューを亡くしても、希望を持って教師として前進していく

というところで終わります。

 


その続編が「アンの青春」原題“Anne of Avonlea”です。

 

 

 


マシュー亡き後、気弱になったマリラを助け、

グリンゲーブルス農場も維持し、

地元アヴォンリーの学校で子どもたちの教育をしつつ、

盟友ギルバートと共にアヴォンリー村を

良くする改善運動にも着手し、

いくつもに失敗にも屈しない元気いっぱいのアンの

16 歳から18歳までが描かれています。

 


天真爛漫に見えるアンですが、心の奥には人生の悲しみを

十分に知っている深い湖があります。

そしてそれ以上に人生を美しくする光を放っています。

アンを産み育てた作家ルーシー・モード・モンゴメリその人が

両親の愛を知らず、祖父母に育てられ、

本を読むことで魂の成長をしていた人だからでしょう。

 

f:id:tw101:20200229111922j:image 恋人の小径

 


イベントの延期が後を絶たず、

すっかり意気消沈でしたが、

その中にあって

新しい繋がりも生まれました。

コロナ騒動が終息したら、

みんなで逢いましょう!という

嬉しい楽しいお約束をしました。

 


この年なって新しい出会いができことは

大きな喜びです。

“kindred spirit “同志、心の友、

心の同類 という意味で、

アンは心のあり方で

親しくなれるかどうかを

本能的に見極めていました。

 


富、地位、名誉、職業、知識、

などは関係なく、

心持ちが一番大事!

 


アンと教え子のポール・アービング

まさに心の同類でした。

再び「アンの青春」から引用します。

 


「その王国のなんと美しいこと 

 想像が、風景の扉を開きゆく」

この幸せな王国へむかう道すじを二人は知っていた。

その国では、歓びの薔薇が谷間や小川のほとりに永遠に咲き、陽の輝く空は雲に翳ることなく、甘さ調べの鐘も調子をはずすことがない。そこには、夢みる心の同類たちがつどっているのだ。

王国のありかーそれが「太陽の東、月の西」であることーこれは大金をはらっても教わることのない貴重な言い伝えであり、どんな市場へ行こうと買えない知識だった。

それはきっと、生まれたときに良い妖精たちがさずけてくれる贈り物なのだ。

いくつになろうと、そこなわれることも奪われることもない贈り物。

この贈り物をさずけられた人は、たとえ屋根裏に住もうと、それを知らずに宮殿に暮らす人より、はるかに心が満たされるのだ。

 


「心の同類」と一緒に過ごすとき、

それが束の間でも

輝く王国にいるのだと思います。

 

 


2020年、この先の見通しは明るくないのが

現実です。

コロナ新型ウイルス感染は

更に広がるかもしれません。

リーマンショックに匹敵する世界不況が

襲うかもしれません。

みんなが不安にかられているから、

つまらないデマに惑わされ、

トイレットペーパーを買い漁る

ハメになってしまいます。

これから、

もっとすごいデマが実しやかに流れてくるかもしれません。

 


こういう時だからこそ、心を落ち着けて、

「心の同類」の皆さんと静かに過ごしたいと願っています。

 

そして未曾有の事態に目を背けず、

どう立ち向かうかを考えたいと思います。

 


アンはマリラに言います。

「一番幸せで心楽しい暮らしとは、華やかなこと、驚くようなこと、胸ときめくようなことが起きる日々ではなく、さりげない小さな喜びをもたらす毎日が、今日、明日としずかに続いていくことなのね、まるで真珠が一つ、また一つと、糸からすべり出ていくように」

 


I believe the nicest and sweetest days are not those on which anything very splendid or wonderful or exciting happens but just those that bring simple little pleasures,

following one another softly,like pearls slipping off a string.…

 


 

どうか、今日という日が真珠のような一日になりますように。

 

f:id:tw101:20200229112117j:image グリンゲーブルスの庭

 

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