港も見える丘から

人生のゴールデンエイジにふと感じることを綴っていきます

NO.185 《流浪の月》凪良ゆう作 

f:id:tw101:20200523132521j:image

 

 

ステイホーム週間は読書三昧で過ごしています。

本屋さんに行くこともできないので、

もっぱらAmazon  Kindleでダウンロードして読んでいます。

 


先日、久しぶりに息子の学校でお世話になった先輩のお母様と電話で話している時に、

薦めていただいた本が

2020年本屋大賞受賞作『流浪の月』(東京創元社)です。

 



 


『流浪の月』は母親に捨てられた8才の少女と、

彼女を誘拐した犯人とされた青年の間に通い合う不思議な感情を、

ほとばしる繊細な言葉で綴った物語です。

 


Amazonにある紹介文です。

 


“せっかくの善意をわたしは捨てていく。

そんなものでは、わたしはかけらも救われない。

愛ではない。けれどそばにいたい。

新しい人間関係への旅立ちを描き、

実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

 


あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人間を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。”

 

あらすじです。

主人公は家内更紗(かないさらさ)と、佐伯文(さえきふみ)の二人です。

 

更紗はやや風変わりな両親と幸せな暮らしをしていましたが、

大好きな父が亡くなり、愛する人なしでは生きられない母は

娘一人置いて男と出奔。

更紗は9歳で親戚の家に引き取られ、「地獄」をみます。

その家を逃だしたいという思いに駆られていた更紗は

ある日、公園で19歳の文と出会い、

一人暮らしをする彼の部屋に居ついてしまいます。

ところが、親戚から失踪届が出されたていた更紗は

たまたま出かけた動物園で見つかり、

保護されてしまいました。

文は誘拐犯として逮捕。

その様子はニュースやSNSで拡散され、世間を騒がせます。

 

時は流れて、10年後、二人は再会しました。

そして…物語は始まるのです。

 

 

私の母方の家は昔からアパート経営をしていたので、

子どもの頃からこの世界にはいろいろな家庭事情があることを理解していました。

物心ついてから、父と母はずっと別居でしたが、祖父が家長として、

しっかり支えていましたから、何の問題もありませんでした。

母は他人の面倒をみるのが大好きで、

アパートには横浜市立大学医大生が数人下宿していて、

おまけに、彼らのお友達まで遊びにきていて、

大家族のように食事を共にしていました。

 


母なき後は、さすがに下宿生はいなくなり、

“普通のアパート”になってしまいました。

 

母の遺伝子は私に流れているようで、

今、私はシェアハウスのオーナーとしてたくさんの人たちと家族のように暮らしています。

中には複雑な事情を抱えている方もいます。

初めは一定に距離感を保ちながら

親しくなっていく道程には、

「同じ釜の飯を食う」そう、

食事を一緒にいただくことが重要だということがわかってきました。

 


コロナ感染拡大によるステイホーム期間、

ソーシャルディスタンスを取るべく、

共有部分の使い方も含めて、

いろいろな取組をしてきました。

微妙に中の空気も変わってきました。

その空気をどう読み、いかに行動するかを考えていた時に、

この小説を勧められたのです。

 


他人に関する想像力はあると思っていた自分、

誰も私を真には理解しくれないと思い込んでいる自分、

他人の評価や思い込みに振り回されそうな自分、

正義感いっぱい、善意いっぱいと信じている自分、

誰かの役にたちたいと思っている自分、

優しくされたいと希っている自分、

面倒くさいから、逃げたいと思っている自分、

 

自分のことさえわからない私は

他人のことをどう理解できるのだろうか…

表面だけで判断してしまっているのではないだろうか…

と考えました。

 


新しい人と関わり…

コロナ禍のあとの関わりは

もう少し内面的になっていくのではないかしら…

誰と一緒に暮らしたいのかを考え直すときなのではないかしら…

 

 

 


「流浪の月」は2020年にふさわしい一冊だと思います。

 


もともと漫画家志望の凪良ゆうさんはボーイズラブの旗手。

一貫して「どこまでも世間と相入れない人たち」を描いています。

すっかり文章にハマってしまい、続けて「神さまのビオトープ」も読みました。

 

f:id:tw101:20200523135009j:image
こちらもおすすめです。

 

誰にでもある「聖域」を分かちあうことができる…

愛するっていうこと…

 

そういう人と一緒にいられたら

それが幸せなのかもしれない…ですね。