港も見える丘から

人生のゴールデンエイジにふと感じることを綴っていきます

NO.166 映画《ジョジョ・ラビット》ネタバレを含みます

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「観たいと思う映画を何でもいいわよ、」とお友達に誘われ、

大喜びでリクエストした映画が《ジョジョ・ラビット》でした。

昨日、映画館で観てきました。

感動いっぱいなので、昂奮のあまりネタバレを含む感想になってしまいますので、

これからご覧になる方はご注意ください。

 


この映画は一言でいうと、

靴紐を結べない10歳の男の子ジョジョの成長物語です。

 

舞台は第二次世界大戦末期のドイツです。

優しいけれど、ちょっと気の弱いジョジョは、

ナチスドイツの軍国少年で、青少年集団ヒトラーユーゲントの戦士になるべく

特訓キャンプに参加します。

身体も小さく体力もないジョジョはキャンプでも落ちこぼれとなりがちで、

教官に目をつけられ、ウサギの首を絞めて殺すように命令されますが、

可愛いウサギをどうしても殺すことができず、逃してしまいます。

これ見よがしに教官はジョジョを辱め、

ジョジョ・ラビット」と不名誉なあだ名をつけて、

キャンプ仲間からもからかわれてしまいます。

そんなジョジョを慰めるのは、

空想の友人アドルフ・ヒトラーでした。

「ウサギは勇敢でずる賢く強い!」と激励され、

その気になったジョジョは仲間が尻込みして手に取らない手榴弾を奪って走り、失敗。

大怪我をしていまいます。

 

 

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母親ロージーは教官にねじ込み、リハビリを兼ねて、

街中にポスターを貼る、チラシを配るなどの簡単な仕事に回され

本人は不本意ながらも戦争参加は免れます。

そんなある日家に帰ると、亡くなった姉インゲの部屋から物音が…

不審に思い、調べてみると、壁の向こうに秘密の部屋を見つけます。

そこにはユダヤ人の少女エルサがいました。

ユダヤ人がいる!ユダヤ人を母親が匿っている!

ジョジョは驚き、悩みます。こんなことして重罪だ!

通報すればお母さんもあんたも協力者として、

死刑になるとエルサに脅かされ、

困った末に「ユダヤ人の秘密を全部話す」という条件つきで、

容認することにしました。

 

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エルサを知るうちにこれまで教えられてきた

ヒトラーユーゲントの「ユダヤ人は下等な悪魔」は

事実と異なるのではないかと気づき始めます。

そして、ジョジョは自我に目覚めていきます。

 


母親ロージージョジョに自由の素晴らしさを教えます。

ダンスのステップを踏むシーン、一緒に自転車に乗るシーンは美しく、

悲惨な戦争でも魂の全てを奪い取ることはできないと思いました。

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これ以上はご法度なので控えますが、

この映画の視線は10歳のジョジョのものですから、

母親がなぜエルサを匿うことになったのか、

父親はどうなっているのか、エルサは何者か…などは些末なことで、

彼の興味は

ユダヤ人とドイツ人はどうやって見分けるの?どこがどう違うの?

愛って何?女の子に恋するとどうなるの?という少年らしいものです。

 


途中までコメディで、だんだんとシリアスになっていきますが、

戦争をテーマにしている映画なのに、悲壮感はありません。

最後は真の勝利は何かを伝えてくれます。

 


ジョジョ役にローマン・グリフィン・デイビス

正統派のその可愛いさはウイーン少年合唱団大好きの私を虜にしました。

笑顔も、泣き顔も、困った顔も、情けない顔もみんな可愛いローマン君です。

 

お母さん役にスカーレット・ヨハンソンは美人で、

陽気で、存在感のある、理想のママでした。

 

トーマシン・マッケンジー扮するエルサは知的でユーモアたっぷりで、

絶対お姉さんにしたい女の子です。

 


監督タイカ・ワイティティ自ら道化役アドルフ・ヒトラーを演じ、

戦争の狂気を全く違う角度から描いていました。

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戦争の怖さは世界のどこかでなく、私たちの心の中にあるのだと改めて思います。

映画の中では、砲火から逃げまどうジョジョが描かれています。

戦火の中で親友ヨーキーと再会しますが、ヨーキーが言う言葉が印象的でした。

ソ連アメリカ、イギリス、連合軍がやって来るんだ。

今、味方で戦っているのは日本人だけだけど、奴らはアーリア人じゃないからね…」

 

ヨーキーはヒトラーの嘘を知り、あっさり切り捨て、

すぐに立ち直り、おそらく米兵相手に商売しそうなバイタリティある男の子。

いいキャラです。アーチー・イエーツが好演しました。

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戦争が終わった時、

ジョジョは靴紐の結べない10歳の男の子から

靴紐を結べる10歳半の少年に成長していました。

ユダヤ人を知らないから、

「差別して憎め」という教えを受け入れていたジョジョ

エルサ個人を知り、理解を深めることによって、

ユダヤ人全体への偏見を捨て、辛い現実、喪失の悲しみを経験し、

正しい道を自分の頭で考えて、選ぶことができるよう、

魂の成長を遂げました。

 


           “すべてを経験せよ

           美も恐怖も

           生き続けよ

           絶望が最後でなない”  

                                              詩人ライナー・マリア・リルケ

 


なんという力強い言葉でしょうか!

恋することを知り、愛することを学んだジョジョは、

力強い一歩を踏みます。

 


さて、最初にすることは…

 


冒頭で流れるビートルズ「抱きしめたい」

ラストの名場面では、デヴィッド・ボウイ「ヒーローズ」(ドイツ語版)

音楽も素敵でした♪

 


ぜひ、映画館でご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 


【おまけ】

ベルリン市街戦末期、1945年4月30日、

総統アドルフ・ヒトラーはベルリン総統官邸で自殺しました。

翌日には後継首相のゲッベルスも自殺し、5月2日にはソ連軍に占領されました。

そして5月7日、無条件降伏をしました。

 

ちなみに4月30日はワルプギスの夜という古代ケルト人のお祭りで、

ドイツの魔女たちはブロッケン山に集まるという伝承があります。

ヒトラーはこの日を意識して死ぬ日として選んだのでしょうか…