港も見える丘から

人生のゴールデンエイジにふと感じることを綴っていきます

NO.128 吟遊詩人の旅 ウクライナの音楽と文学

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昨夜、JASRAC 日本音楽著作権協会主催 「世界を旅する音楽」の最終回がけやきホールで開かれました。
私は昨年、夏にバンドウーラ奏者 カテリーナさんのコンサートをプロデュースしました。
今回のコンサートはお姉さんのナターシャさんが出演されました。
水晶の歌声と言われる通り、美しい容姿とその歌声にすっかり魅了されました。

赤い花々の刺繍が施された白いブラウスに真っ赤なロングスカート姿の
ターシャさんはバンドウーラが63本の弦があり、重さは8キロもあることなど、
ひと通りの説明をしてくれました。
バンドウーラにもいくつかの種類があるそうで、
最近は若い世代にも人気があり、ポップスやジャズなどのジャンルを超えて
使われているようです。

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ウクライナの女性は皆、刺繍を教えられ、
刺繍ができないと家事ができないとみなされてしまい、
家庭でも学校でも必ず習うものだそうです。

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刺繍をするときは1人で黙ってするのでなく、何人かが集まり、
おしゃべりや歌を歌いながら楽しみながらするそうです。
刺繍には魔除けの意味があって、
胸元、首周り、袖口、そういうところから邪悪なものが入りこまないように
するためと知りました。

 

 

第2部では東京大学大学院スラブ語文学と現代文芸論を教えていらっしゃる
沼野充義先生の講義もありました。

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ウクライナ旧ソ連の一部としてひとまとめにされていましたが、
ロシアよりずっと古い歴史と伝統を持っていて、
プロコフィエフをはじめとした数多くの音楽家を生んできました。

文学者は 「死せる魂」のニコライ・ゴーゴリ
オデッサ物語」イサック・バーベリ
映画ではセルゲイ・パラジャーリ「火の馬」
最近の作家ではアンドレイ・クルコフ「ペンギンの憂鬱」
が挙げられました。

ソフィア・ローレン主演「ひまわり」に出てくる一面のひまわり畑も
ウクライナです。

さて、バンドウーラと似たコブザいう楽器があります。

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コブザは小型で弦の数も少なく、リュートに発展していきます。
コブザの弾き手をコブザーレと呼びました。
琵琶法師のように、盲目のコブザーレも多かったそうで、
彼らは虐げられた弱者の思いを込めた歌や
政府の批判的な歌を歌いながら村村をまわる
吟遊詩人でした。
当然、政府からはよく思われず、迫害されました。

 

「コブザーレ」という詩集を書いたウクライナの国民的詩人 タラス・シェフチェンコ
彼は近代ウクライナ語文学の始祖と呼ばれ、

紙幣にも自画像が描かれるほどの超有名人です。

貧しい農奴の生まれで幼くして孤児となりますが
絵の才能を見出され、画家、詩人として生きます。

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しかし、農奴解放運動にも関わり、皇帝ニコライ1世とその妻アレクサンドラを
批判する詩が見つかり、逮捕されて、サンクトペテルブルクの刑務所に収監され、
その後、10年間も流刑生活を送りました。
その間はペンも絵筆も持つことを禁止されました。

「コブザーレ」はウクライナ語で書かれたため、ロシアの知識人からは
「いなかっぺの言葉」を使う詩人と批判されましたが、ウクライナの文化人からは
母国語で書いたことで絶賛されました。

ターシャさんは「コブザーレ」の詩に作曲して、
日本語で歌っています。
望郷の思いを切々と歌っているナターシャさんの姿は
悲しみだけで終わらず、その先に続く希望を見せてくれました。

シェフチェンコが友人 コトリャレフスキーの死を悼んで書いた
「レクイエム」にナターシャさんが曲をつけた
初演も見ることができて幸いでした。

アンコールは「鳥の歌」
パブロ・カザルスによる平和を希求する旋律は
歌に込められたナターシャさんの思いが
心に染み込んできて、最後の音がなり終わった後も
鳥の声が聞こえてくるようでした。

6歳のときにチェルノブイリ原発事故を経験したナターシャさん、
原発から3.5キロしか離れていなかった彼女のふるさとは
二度と帰ることのできない場所となりました。

望郷の思いを持ちながら、
日本を第二の祖国として福島の子どもたちのためにも
活動している姿に心をゆり動かされました。

運命を嘆かず、使命を生きる道を選んでいく勇気を与えられました。

2月11日には鎌倉 建長寺で東北の子どもたちを招いての
コンサートがあるそうです。

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私に何ができるだろうとふと考えながら帰途につきました。

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