港も見える丘から

人生のゴールデンエイジにふと感じることを綴っていきます

NO.169 『ある男』かかる日のかかるひととき

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武者小路実篤の自伝的小説「或る男」

有島武郎の傑作「或る女

高校生の頃、好んで読んだものです。

そして先日、平野啓一郎氏著「ある男」を読み終えました。

「或る」でなく「ある」と平仮名であることに今どきを感じます。

 


作家デビューして20年の平野啓一郎氏はご自身の公式サイトの中で、

読者へのメッセージとして以下のように書いていらっしゃいます。

 


…小説家としてデビューしてから、今年で二十年となりますが、『ある男』は、今僕が感じ、考えていることが、最もよく表現出来た作品になったと思っています。例によって、「私とは何か?」という問いがあり、死生観が掘り下げられていますが、最大のテーマは愛です。それも、前作『マチネの終わりに』とは、まったく違ったアプローチで、今回はどちらかというと、城戸という主人公を通して、美よりも、人間的な〝優しさ〟の有り様を模索しました。

 


「ある男」とは、一体誰なのか?なぜ彼の存在が重要なのか? 是非、ゆっくりこの物語を楽しんで下さい。…

 

 

 

 


あらすじです。

弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。宮崎に住んでいる里枝には2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。

ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか。「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。

人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。

 

 

 

私は平野啓一郎氏の著作は大好きで、

特にショパンの人生を描いた『葬送』を読んでから、

パリ・マドレーヌ寺院の入り口に立った時、さーと頬を撫でていく風を感じ、

ショパンのお葬式の列に並んでいるような不思議な気持ちになったことを

思い出します。

生き生きとした描写から情景が目の前にはっきりと浮かび、

風や匂いまで感じられる文章は魅力があり、大ファンです。

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最近映画化された『マチネの終わりに』も感動しました。

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さて、私は「人の一生とは何だろうか」といつも考えて生きてきました。

「いかに生きるか」という問いを持ち、聖書はもちろん、

難しい哲学書や純文学を読み漁っていた10代。

結婚、出産を経験し、命の尊さを思い、

人生の意義をしみじみ思った20代。

乳幼児から子どもへと育ち、手を離れていく寂しさを感じ、

さあ自分の人生どう生きるかを考えまくった30代。

思春期から青年期へ成長する息子たちを見守りつつ、

会社の仕事と学校役員で家事で頑張りすぎ、

「いかに生きるか」など考える間もなくなった40代。

子育ても終わり、息子の結婚、孫の誕生と充実期を迎えた50代。

そして、還暦を過ぎて、今、私は「残りの人生」を

どう生きるかと考える年を迎えました。

 


『ある男』に描かれた登場人物一人ひとりの人生を垣間見て、

「自分」は何者で、過去はどれほどの意味があり、

人を愛するってことはなんだろうと、

10代の時に感じた思いが再び蘇ってきました。

 


何を大切に生きるは人それぞれ異なっていきます。

結婚したときは、価値観も同じ、

片時も離れていたくないほど側にいたい!

絶対、一生一緒にいたい!思っていてもだんだんと

その気持ちは薄れて、熟年離婚ということも多々あります。

 


「ある男」は自分の過去を消して、別人として生きました。

彼はいったい何者だったのか

なぜ別人として生きなければならなかったのか、

どうやって別の人生を歩めるようになったのか、

 

生前の「彼」に会ったことのない弁護士は過去を探っていくことで、

自分とは何かを考えるようになっていきます。

そして読者も城戸弁護士と同じように、

自分はどう生きているかという思いになっていきます。

 

 


ネタバレですが、城戸は家族で東京スカイツリーを訪れるシーンがあります。

ストーリー展開には関係のない章のように見えますが、

ここにとても印象残る言葉が書かれています。

 

 

…昔、何かの小説で読んだ「ああかかる日のかかるひととき」という嘆声が脳裡を過った。

誰の本だったかは、どうしても思い出せなかった……

 


「ああかかる日のあかかるひととき」

読んだ瞬間に

この言葉を好んで使った高校時代をはっと思いだしました。

大好きだった梶井基次郎城のある町にて」の中にある

短編「ある午後」に出てくる言葉です。

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ずっと忘れてた言葉を読み、あのときの鮮やかな感情が蘇ってきて、

驚き、最終ページを読み終わったとき、

私も自分の人生を「かかる日のかかるひととき」を

大切にして過ごそうという思いが込み上げてきました。

 


携帯電話はなく、写真を撮ることもなく、

SNSで発信することもなかった時代、

この景色を心に刻んでおこうと意識していました。

 

今でもふと思い出す「かかる日のかかるひととき」は

真珠の光沢を放ち、一つひとつの思い出の真珠に糸を通して、

綺麗な首飾りとなっている…そんなイメージが膨らみます。

 


これからどれだけ「かかる日のかかるひととき」を

過ごしていけるのかしらと思います。

 


今年初めて池に凍りが張りました。

サクラダファミリア 横浜駅はもうすぐ駅ビルが開店します。

 

そして鶴屋町に44階のビル建設が始まっています。

大きく変わる横浜駅西口。

 

ここから見渡す景色も

5年後は全く違うものになっていることでしょう。

 

 

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今日起きる一場面が「ああ かかる日のかかるひととき」となり

良いおもいでになりますように。

 

NO.168 暴力は絶対だめ!」アストリッド・リンドグレーン

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ラッセの父親である編集長ブロンベルクとキッパリ別れたアストリッドは

愛息を連れて実家の農場に戻ります。

育児は苦手だけれども、遊びの天才!

干し草にトンネルを作る方法や、

石壁の上でバランスを取る方法、

草むらに寝転がり雲の形を見る方法を熟知して、

一緒に楽しく、ラッセと遊びました。

そもそもアストリッド自身が両親の愛をたっぷり受けて

自由奔放に育てられ、人生の中で一番楽しかった子ども時代を

ラッセにも十分に味わって欲しかったのでしょう。

4歳のラッセにとって楽園の日々でした。

 


そして、アストリッドに再びロマンスが訪れます。

勤め先に上司である9歳年上にステューレ・リンドグレーン

詩を贈ってくれるロマンティックな文学青年は、

アストリッドにメロメロになり、妻子と別居、離婚とトントン拍子に進み、

1931年4月に実家で結婚式をあげました。

 


ストックホルムに新居を構えて、

農場に暮らすラッセを引き取り、

ようやく落ち着いた生活が訪れ、

1934年には長女カーソンが誕生しました。

 


二児の母になっても破天荒さを失わないアストリッドは、

子どもたちと本気で遊ぶ中で、

後の創作の源となる遊びの経験値を高めていきました。

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1941年冬、はしかにかかって何日も寝込んでいた7歳のカーソンに、

請われて即興で作った話が「長くつ下のピッピ」でした。

 


アメリカの女流作家ジーン・ウェブスター

小説『あしながおじさん』PAPPA LÅNGBEN

という名前をヒントに PIPPI LÅNGSTRUMP

『ナガクツシタのピッピ』を思いつくなんて、本当に楽しい人だと思います。

 


孤児ながら『あしながおじさん』に身染められ、

高等教育を受けたのち、自立しそうで、結局「あしながおじさん」と恋に落ち、

幸せな結婚をしたジルーシャ・アボットの幸福感とは、まるで異なるピッピ!

支配することも、支配されることも望まず、

ただ自分の思う「善」のために力を出すピッピはこれまでの

ヒロイン像とは全く異質なものでした。

 


長くつ下のピッピ」を本にまとめようとして、

出版社からの返事を待っている最中、

夫のステューレから他に好きな人ができたから離婚してほしいと切り出されます。

なんということ!一気に生活不安が押し寄せます。

子どもと一緒の時間を大切にしようと専業主婦をガンバってきたけど、

所詮、男まかせの幸福なんてはかないものだと、

経済的にも自立するために、物書きとして生きることを決意、

「ブリット-マリはただいま幸せ」で出版デビューを果たしました。

 


翌年、浮気相手と別れて家に戻ってきたステューレを尻目に、

アストリッドは作家の道をひた走ります。

1945年、『長くつ下のピッピ』は出版社の金賞に輝く栄誉を勝ち取りました。

37歳になっても、子ども心を失わないピュアな作風は

子どもたちに圧倒的に支持され、ピッピの続編、

『名探偵カツレくん』『やかまし村の子どもたち』を立て続けに出版し、

あわせて10万部を売り上げ、4つの文学賞を受賞し、

児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの名を不動のものにしました。

 


子どもたちは次第に育ち、手を離れ、酒に溺れた夫ステューレは

ほとんど家に寄り付かなくなりますが、

アストリッドの快進撃はとまらず、著作は16冊を超え、

小さな出版社は国内有数に出版社に育てました。

 


1952年に夫と死別。

1960年代に孫たちが生まれ、

孫世代がアストリッドの遊び友達となりました。

1963年から始まった「エーミル」シリーズは

カンシャク持ちの3歳の孫の興味をも引くほどのいたずらっ子が主役。

 

 

 

アストリッド作品をむさぼり読んだ子どもたちが大人になる頃には、

彼女はスウェーデン国民のヒロインになっていました。

作家だけにとまらず、アストリッドは社会運動家としても

大きな仕事をしていました。

1978年ドイツ書店協会平和賞授与の受賞スピーチ

「暴力は絶対にだめ」で彼女の最も言いたいことを伝えました。

暴力と権威主義、とくに、

子どもたちが最も被害を受ける家庭内暴力の問題についてでした。

主催者側からあまりに挑発的を見なされ、

内容の変更を求められましたが、決して妥協せず、

このスピーチなしでは授賞式に出ないとまで言い、名スピーチはなされました。

 

少し抜粋します。

………さて、もしわたくしたちが、暴力に頼ったり、手綱を引き締めたりせず、子どもを育てたならば、永遠の平和を実現しうる新しい素質を持つ人間を生み出すことができるでしょうか?

そんな単純なことを望むのは、子どもの本の作家だけですって⁉︎

それが実現するのは、ユートピアだけなのだと、わたしにも分かっています。

それにもちろん、わたしたちの病んだ悲惨な世界が、平和を達成するためには変わらなくてはならないことは、他にもたくさんあります。

けれども、現時点で戦争が起こっていなくても、世界には理解できないほど残忍なことや、暴力、圧制があふれていて、子どもたちは、そのことについて間違いなく無知ではいられないのです。

子どもたちは日常的に見たり、聞いたり、読んだりして、ついに暴力は、当たり前に起こるのだと思うことでしょう。

ですから、物事を解決するには暴力以外の別の方法があることを、わたしたちはまず自分の家で、お手本として示さなくてはならないのです。

「暴力は絶対にだめ!」ということを思い出すために、台所の上に石を置いておくのは、子どもたちとわたくしたち自身にとって、いいことではないでしょうか。

そうすることで、もしかすると、少しずつではあっても、世界平和に貢献できるかもしれません。…

 


このスピーチをきっかけにスウェーデンでは

子どもへの体罰を禁止する法律が世界に先駆けて成立しました。

アストリッドは旺盛に社会運動にコミットし続け、

慈善組織だけでなく、クルド難民の少女、障害や病気をもつ子ども、

ありとあらゆる人に多額の金銭援助もしました。

1986年、最愛の長男ラッセを癌で亡くし、

一旦は悲しみにくれますが、生きる元気は衰えず、

80歳まで木登りし、ひ孫とも力いっぱい遊び、

「いたずらっ子」は90歳近くになっても健在でした。

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2002年、アストリッドはカーソンに看取られ、

94歳で息を引き取りました。

 


2015年、スウェーデン紙幣で一番よく使われる20クローネに

アストリッドの肖像とピッピが描かれ、

国民的大作家はより身近になりました。

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スウェーデンには親しいお友達もたくさんいるので、

いつか、アストリッドが遊んだ風景を訪ねていきたいと思いました。

 

 

 

 

 

 

NO.167 映画《リンドグレーン》ネタバレご注意!

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岩波ホールの映画とお食事を楽しむ会」という

素敵な企画に初めて参加してみました。

 

 

 

いきなり冒頭からアブラハムと「ソドムとゴモラ

の説教が行われる教会のシーン…

16歳のアストリッドは牧師の話も上の空、

隣席の母親から睨まれても気にかけず、

聖書をいじっている姿にはなから共感を得てしまいました。

雪の上を走るソリに乗っての帰り道、

「おはようばっかり言っているゴモラソーダ水ばかり飲んでいるソドム、

どっちがいい?」というアストリッドをまたしても母親が睨みつけます。

教会の敷地に住む信心深い家族の中でも、

アストリッドは少し変わった女の子なのねと、さっそく、感情移入。

 


この映画は私の大好きな作家アストリッド・リンドグレーン

16歳から10年間を描いた映画です。

 

 

 

 

 

 

あらすじは…

スウェーデン片田舎スモーランド地方の自然の中で、

信仰ある両親の元で、3人の兄弟と伸び伸びと育ったアストリッドは、

思春期を迎え、男である兄と女の自分への扱い違いから、

「神の前で平等なはずなのに男女の差はおかしい」と自分の考えを持つなど、

保守的な田舎の生活に息苦しさを感じていました。

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ある日、地方新聞社の編集長ブロンベルクに文才を見込まれ、

仕事に就き、次第に才能を開花させていきます。

当時流行の兆しを見せていた「断髪」にいち早くチャレンジし、

自由な未来へと飛び出していくアストリッドでした。

 

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亡き妻の間に7人子を持つ49歳の編集長ブロンベルクは2番めの妻との

離婚調停中にもかかわらず、

まだ未成年のアストリッドと恋に落ち、

愛し合うようになり、

不倫の末に妊娠させてしまいました。

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猛反対の母親と、ブロンベルクの離婚後、

彼と結婚する考えを変えないアストリッドは対立し、

自分一人でデンマークコペンハーゲンで出産することを決意します。

幸運にもマリアという愛情溢れる女性と知り合い、

無事、可愛い男の子を出産し、ラーシュと名付け、

ラッセと愛称で呼ぶことになりました。

 


アストリッドの不倫関係のせいで妻に姦通罪で

告訴されそうなブロンベルクはなんとも頼りなく、

アストリッドは裁判が落ち着くまで、ラッセをマリアに預けて、

事態が収まったら、家族で一緒に暮らそうと、

単身ストックホルムで仕事をし、

スウェーデンデンマークの間を行ったり来たりする生活をしました。

 


ところが、いつまでたってもブロンベルクは離婚問題を解決出来ず、

時間だけが無駄に過ぎ、ラッセママと呼ばれていても、

ラッセの本当の母親になれないジレンマを抱え、アストリッドは悩みます。

 


結局、ブロンベルクとは結婚せず、

シングルマザーとしてラッセと生きる決心をしますが、

なかなか思い通りにはいきません。

そんなとき、後の夫となるリンドグレーン

アストリッドの支えとなっていきました。

 


最後はアストリッドの実家に戻る決断をして、

周囲の冷たい視線を跳ね除け、

祖母となる母親がラッセを抱いて、

教会に連れて行くシーンで終わります。

 

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ネタバレごめんなさい。

この映画は「ストーリー」よりも情景や情感を味わう映画だと思います。

 


なんと言ってもも主役のアルバ・アウグストが魅力的でした。

子どものときから、「可愛い」と言われたことのない女の子が持つ悲観主義

ときには癇癪を起こし、わがままで自己中心的。

しかしながら、打算なく一途なアストリッドをよく演じていたと思います。

 

ラッセを演じた子役の男の子が天使のように可愛くて、

メロメロです。

 


さて、私は小学生時代にリンドグレーンにはまりました。

特に「やかまし村」が大好きで、近所の子どもたちを「やかましごっこ」をしていました。

いつかスウェーデンに行きたいなあと思っていました。

 

f:id:tw101:20200126091801j:image 岩波ホールに展示してあった初版本

 

最強の女の子ピッピは個性があまりに強くて、

ピッピとどう付き合っていったらよいか途方にくれた思い出があります。

私は物語に中に自分も入っていき、自分のキャラクターを作り、

一緒に遊んでしまう遊びをしていました。

アン・シャーリーにはお付き合いできましたが、

ピピロッタ・ビクトリア・ルルカーテン・クルスミュンタ・エフライムスドッテル・ロングストルンプ

あまり奔放でアンニカように楽しく付き合えないわあと本気で思っていました。

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今回、映画を見て、アストリッドの中のなりたい自分の一人が

ピッピだったのね!と納得しました。

 


今、アメリカ大統領だって怖くない、世界最強の女の子はグレタさんです。

おさげのグレタさんはピッピ⁉︎

 


スウェーデンという国が、最強の女の子を生み、育てられる土壌になったことに

もしかしたら、いえ、絶対にアストリッドが一役かっているのねと思いました。

 

 

 

岩波ホールで映画鑑賞後、水道橋方面に歩いて7分、

「庭のホテル」でお食事しました。

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軽いランチかと思いきや、フルコースメニューで驚きました。

 

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映画にちなんでのジンジャークッキー、ベリークッキーも美味しかったです。

 

 

 

お食事後には北欧ジャーナリスト森百合子さんのトークショーもあり、

至れり尽せりの会でした。

 

f:id:tw101:20200126092259j:image  スウェーデンっぽい仮装というテーマでは圧倒的にピッピだそうです。

 

 

 

アストリッド・エリクソンアストリッド・リンドグレーンになるまでの恋物語や、

その後の人生はどうなっているの⁉︎

この続きはまた、後日…に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NO.166 映画《ジョジョ・ラビット》ネタバレを含みます

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「観たいと思う映画を何でもいいわよ、」とお友達に誘われ、

大喜びでリクエストした映画が《ジョジョ・ラビット》でした。

昨日、映画館で観てきました。

感動いっぱいなので、昂奮のあまりネタバレを含む感想になってしまいますので、

これからご覧になる方はご注意ください。

 


この映画は一言でいうと、

靴紐を結べない10歳の男の子ジョジョの成長物語です。

 

舞台は第二次世界大戦末期のドイツです。

優しいけれど、ちょっと気の弱いジョジョは、

ナチスドイツの軍国少年で、青少年集団ヒトラーユーゲントの戦士になるべく

特訓キャンプに参加します。

身体も小さく体力もないジョジョはキャンプでも落ちこぼれとなりがちで、

教官に目をつけられ、ウサギの首を絞めて殺すように命令されますが、

可愛いウサギをどうしても殺すことができず、逃してしまいます。

これ見よがしに教官はジョジョを辱め、

ジョジョ・ラビット」と不名誉なあだ名をつけて、

キャンプ仲間からもからかわれてしまいます。

そんなジョジョを慰めるのは、

空想の友人アドルフ・ヒトラーでした。

「ウサギは勇敢でずる賢く強い!」と激励され、

その気になったジョジョは仲間が尻込みして手に取らない手榴弾を奪って走り、失敗。

大怪我をしていまいます。

 

 

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母親ロージーは教官にねじ込み、リハビリを兼ねて、

街中にポスターを貼る、チラシを配るなどの簡単な仕事に回され

本人は不本意ながらも戦争参加は免れます。

そんなある日家に帰ると、亡くなった姉インゲの部屋から物音が…

不審に思い、調べてみると、壁の向こうに秘密の部屋を見つけます。

そこにはユダヤ人の少女エルサがいました。

ユダヤ人がいる!ユダヤ人を母親が匿っている!

ジョジョは驚き、悩みます。こんなことして重罪だ!

通報すればお母さんもあんたも協力者として、

死刑になるとエルサに脅かされ、

困った末に「ユダヤ人の秘密を全部話す」という条件つきで、

容認することにしました。

 

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エルサを知るうちにこれまで教えられてきた

ヒトラーユーゲントの「ユダヤ人は下等な悪魔」は

事実と異なるのではないかと気づき始めます。

そして、ジョジョは自我に目覚めていきます。

 


母親ロージージョジョに自由の素晴らしさを教えます。

ダンスのステップを踏むシーン、一緒に自転車に乗るシーンは美しく、

悲惨な戦争でも魂の全てを奪い取ることはできないと思いました。

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これ以上はご法度なので控えますが、

この映画の視線は10歳のジョジョのものですから、

母親がなぜエルサを匿うことになったのか、

父親はどうなっているのか、エルサは何者か…などは些末なことで、

彼の興味は

ユダヤ人とドイツ人はどうやって見分けるの?どこがどう違うの?

愛って何?女の子に恋するとどうなるの?という少年らしいものです。

 


途中までコメディで、だんだんとシリアスになっていきますが、

戦争をテーマにしている映画なのに、悲壮感はありません。

最後は真の勝利は何かを伝えてくれます。

 


ジョジョ役にローマン・グリフィン・デイビス

正統派のその可愛いさはウイーン少年合唱団大好きの私を虜にしました。

笑顔も、泣き顔も、困った顔も、情けない顔もみんな可愛いローマン君です。

 

お母さん役にスカーレット・ヨハンソンは美人で、

陽気で、存在感のある、理想のママでした。

 

トーマシン・マッケンジー扮するエルサは知的でユーモアたっぷりで、

絶対お姉さんにしたい女の子です。

 


監督タイカ・ワイティティ自ら道化役アドルフ・ヒトラーを演じ、

戦争の狂気を全く違う角度から描いていました。

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戦争の怖さは世界のどこかでなく、私たちの心の中にあるのだと改めて思います。

映画の中では、砲火から逃げまどうジョジョが描かれています。

戦火の中で親友ヨーキーと再会しますが、ヨーキーが言う言葉が印象的でした。

ソ連アメリカ、イギリス、連合軍がやって来るんだ。

今、味方で戦っているのは日本人だけだけど、奴らはアーリア人じゃないからね…」

 

ヨーキーはヒトラーの嘘を知り、あっさり切り捨て、

すぐに立ち直り、おそらく米兵相手に商売しそうなバイタリティある男の子。

いいキャラです。アーチー・イエーツが好演しました。

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戦争が終わった時、

ジョジョは靴紐の結べない10歳の男の子から

靴紐を結べる10歳半の少年に成長していました。

ユダヤ人を知らないから、

「差別して憎め」という教えを受け入れていたジョジョ

エルサ個人を知り、理解を深めることによって、

ユダヤ人全体への偏見を捨て、辛い現実、喪失の悲しみを経験し、

正しい道を自分の頭で考えて、選ぶことができるよう、

魂の成長を遂げました。

 


           “すべてを経験せよ

           美も恐怖も

           生き続けよ

           絶望が最後でなない”  

                                              詩人ライナー・マリア・リルケ

 


なんという力強い言葉でしょうか!

恋することを知り、愛することを学んだジョジョは、

力強い一歩を踏みます。

 


さて、最初にすることは…

 


冒頭で流れるビートルズ「抱きしめたい」

ラストの名場面では、デヴィッド・ボウイ「ヒーローズ」(ドイツ語版)

音楽も素敵でした♪

 


ぜひ、映画館でご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 


【おまけ】

ベルリン市街戦末期、1945年4月30日、

総統アドルフ・ヒトラーはベルリン総統官邸で自殺しました。

翌日には後継首相のゲッベルスも自殺し、5月2日にはソ連軍に占領されました。

そして5月7日、無条件降伏をしました。

 

ちなみに4月30日はワルプギスの夜という古代ケルト人のお祭りで、

ドイツの魔女たちはブロッケン山に集まるという伝承があります。

ヒトラーはこの日を意識して死ぬ日として選んだのでしょうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NO.165 「男はつらいよ 50 」『お帰り寅さん』

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快晴の日曜日、予約していた映画

男はつらいよ 50

お帰り寅さん 」を観てきました。

大切なお友達から特別優待をしていただいて、

いそいそと出かけて行きました。


第一作の公開から50周年となる今年、

新撮された映像と、デジタル修復されたかつての

映像が見事に織りあった見応えのある映像でした。

 

冒頭の主題歌を歌うのは桑田佳祐

山田洋次監督は渥美清と心情が深く重なる桑田佳祐

主題歌を歌ってもらいたいと強く願ってラブレターを書いたそうです。

さすがに桑田佳祐、堂々と寅さんの主題歌を歌いあげました。

 


主人公は寅さんの甥っ子満男君。

脱サラして、辞めて小説家になった49才の満男は、

7年前に妻を亡くし、中学3年の娘と暮らしています。

最新作の評判はまずまずですが、今一歩前に出ることができず、

初恋の泉ちゃんの夢を見たり、

寅さんの思い出を懐かしく思う日々を過ごしていました。

ある日、出版社の意向に逆らえず、渋々、サイン会に応じて、

書店でサインをしている時に、目の前にあの懐かしい泉ちゃんが立っていました。

オランダの現地採用でUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)で働く泉は

夫と二人の子どもと暮らしていますが、

仕事で帰国していて、お土産にする本を選んでいて、

たまたま満男のサイン会に遭遇したのです。

 

突然の再会に驚く満男は「会わせたい人がいる」と神保町の

小さなジャズ喫茶に連れていきます。

かつて奄美大島であったリリーと再会します。

結婚の約束をしながら、結ばれることのなかった二人の秘話を聞きました。

そこからドラマは展開します。

 

「困ったことがあったらな、

風に向かって俺の名前を呼べ。

おじさん、どっからでも飛んできてやるから」

 

あったかな寅さんがそこにいる気がします。

 

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柴又の「くるまや」はカフェになっていて、

お隣の工場はアパートに…

時代の推移を感じます。

 


歴代のマドンナたちが一コマずつ登場するシーンは

その時代の自分の思い出も蘇ってきます。

 

そして、寅さんの話すテンポのある日本語、

マドンナたちが使う綺麗な日本語、

日本語ってすごいなあと感じます。

 

そういえば、満男が就職した会社は言問通りに面した靴屋さんで撮影されました。

二天門で後藤久美子の撮影が行われたとき、大きな人垣ができていました。

私ももちろん観ていました。

さらさらなロングヘアをなびかせる後藤久美子は本当に可愛かったです。

満男と泉、この二人も結婚しそうでしたが、満男の一押しが足らず、

泉はヨーロッパへと旅立っていきました。

 

 

 

 

 


私は寅さんの映画を映画館で観るのは初めてでした。

かつて、夏休みとお正月になると、

日本中のみんなに感動を与えてくれた寅さん。

 

国民的人気を博した『男はつらいよ』シリーズですが

私は寅さんを心から楽しむことは出来なかった時期がありました。

 


寅さんのように人情あふれ、女の子を助けては、

ふられている弟…

 


さくらは妹だから「おにいちゃん…」と言って涙ぐめばいいけど、

お姉ちゃんの私は泣いていられない!

何とか事態収拾に翻弄される、そんなことが多々ありました。

「家族に一人、問題児がいると、

寅さんを笑って観ることはできないものよ。」

曽野綾子が書いた文章を読んで、確かにその通りと思いました。

 


当時の浅草で「男はつらいよ」は特別な映画でした。

劇場には大ファンがいっぱいで、

「よ、寅さん、日本一!」などという掛け声が

あちこちから飛び交い、映画と観客が一体となっていたそうです。

私は鑑賞券をもらいながらも、一度も映画館に足を運んだことはありませんでした。

 


弟も落ち着き、昨年、入籍し、

来春 還暦の年で、なんと結婚披露パーティーをすることになりました。

 


寅さんはお嫁さんをもらわなかったけど、

弟はお嫁さんをもらうことができました。

 


やっと安心して寅さんの映画を観ることができました。

感慨無量です。

 

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年の瀬の横浜は晴れ渡り、

映画館のあるコレットマーレ

梅蘭でランチしてから観た「寅さん」

忘れられない一日となりました。

 

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  《50年の歩みがあったからこそ完成した映画は、

  生みの親である山田洋次監督自身が

   「今まで観たことのない作品ができた」

  と驚くほど、想像を超える奇跡の映画。》

 

最後に流れる渥美清本人が歌う「寅さんの主題歌」

「そんなに頑張んなくっていいんだよ、

 大丈夫だからさあ」

歌は心にしみじみと染み込んでいきました。

 

 

この冬、劇場に足を運んで「寅さん」に会ってみたら、

忘れていたものを思い出すかもしれません。

NO.164 クリスマス2019 サンタクロースがやってきました

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2019年のクリスマス、どうお過ごしでしたか?


今年もサンタクロースがやってきました。
24日の夕方6時半頃、サンルームのドアがそっと開き、
サンタクロースが大きな白い袋からプレゼントを取り出すと、
6才の女の子と2才の男の子は目を見張り、
一瞬の間を置いて、サンタさんのそばに飛んでいきました。
サンタさんからプレゼントをうけとると
「ありがとう」と言って、サンタさんの大きな手と握手しました。
去年は何のことだかよくわからなかった男の子も
今年はサンタさんのこともわかって、大喜びです。
女の子がプレゼントを開けると、そこには二冊の絵本がありました。
男の子には大好きなアンパンマンの絵が描かれている長袖シャツ。
とっても気に入りました。
女の子はさっそく手づくりのクッキーに
お礼にカードを添えて、サンルームの片隅の椅子の上に置いておきました。
すると翌日の夕方、ポストにサンタさんからの
お返しカードが入っていたのです。
「サンタさんからお返事がきたわ!」
小さな封筒の入ったカードを広げて、
女の子の顔は喜びに輝いていました。


今年もやってきたサンタさん、
来年も来てくれるでしょうか…
女の子はいつまでサンタさんを信じているかしら…

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クリスマスは愛に溢れた時です。
小さな子どもたちが暖かな場所で
クリスマスを迎えることができる幸せを噛みしめます。


私の子どもたちが小さな時、それはバブルの真っ只中でした。
世の中にはジングルベルの音…
どこのレストランで食事するか、
何をプレゼントするか、それは大騒ぎでした。


その頃、私たち家族が暮らしていた浅草には“クリスマス”の気配はありませんでした。
すでに松飾りとしめ縄が飾られ、クリスマスをすっかり飛び越えていました。


1年で一番忙しい師走でしたが、プレゼントを考えるのは楽しみでした。

クラスの友達がもうサンタクロースなんていないよ!
サンタクロースは親だよ!という会話を始めた小学3年生くらいでも
「信じている人にはサンタクロースは来るわよ」と言って、
ココアとクッキーを用意したあの頃…

 

 


「サンタクロースの秘密」を話したのは長男が小学4年生の時…

サンタクロースはいないのではと思いつつも

口にはしない息子に私は言いました。

『おめでとう!今年からあなたもサンタクロースの弟子となるのよ!
弟やいとこがサンタクロースを信じる幸せを届ける番となりました!
もらう側からあげる側に!
今までより、きっと、もっと嬉しいクリスマスになるわ!』

 

その子は今は二人の子どものお父さんになりました。


さて、しぇあひるずの住民の一人が去年から
ご自身の子どもたちが小さかった時の思い出を胸に、

サンタクロース役を引き受けてくれました。

 

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クリスマスは愛に溢れた時です。
誰もがサンタクロースになれるのです。


たくさんの愛をもらった子どもたちは
たくさんの愛を与える人になってくれるでしょう…

 


自分の心が愛に満ち溢れたら
世界に平和を作りだすことができるでしょう…


24日、クリスマスキャロル「きよしこの夜」を当時の
ギター楽譜で再現した伴奏で歌いながら
平和を心から願いました。


「天にみ栄がありますように
 地には平和がありますように」…と。

 

そして、家族や親しい方々とクリスマスを楽しくお祝いしました。

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素敵なクリスマスでした。

 

来年もみんなでクリスマスをお祝いすることができますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NO.163 『賢者の贈り物』

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『賢者の贈り物』は、言わずと知れた オー・ヘンリーの短編小説で
原題は“ The Gift of The Magi” 
The Magi (大文字)とは、星に導かれてイエス様の誕生に駆けつけてた東方の三人の博士のことです。

 


ちなみに、MAGI マギ とはイラン古語のギリシア語読みMagoi をラテン語化したもので、
魔術師 magician の語源でもあります。
アケメネス朝ペルシアでは祭司階級であるペルシアのマギと
魔術師としてのバビロニアのマギが明白に区別されました。
新約聖書で東方から星に導かれてきた三人をマギでなく博士と呼ぶことが一般的です。

 

f:id:tw101:20191219103148j:image サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂のモザイクに描かれている三人のマギ


さて、私は『賢者の贈り物』が大好きでした。
小学生の時に教会学校のクリスマスで劇をしたり、
高校生の時は原文を「英文和訳」でなく「翻訳」しようと頑張ってみたり、
思い出はいくつもあります。


あらすじは…


貧しいヤング夫妻はクリスマスにプレゼントを買うお金がありませんでした。
そこで、夫のジムは祖父と父から譲り受けた
大切な金の懐中時計を質に入れ、
妻デラの美しい髪を飾る鼈甲の櫛を買います。


一方デラは自慢の長い髪を切って売り、
愛するジムが大事にしている懐中時計に吊るす
プラチナの鎖を買いました。


妻の短くなった髪を見たジム、
ジムが懐中時計を手放してしまったことを知ったデラ…


お互いの一見愚かな行き違いが、
もっとも賢明な美しい行為だったのです。

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オー・ヘンリーといえば、「最後の一葉」という

悲しいけれど愛のこもった短編小説も大好きでした。
たまに、泣きたくなった時に読んでいました。


今年、6才の孫娘へのクリスマスプレゼントに
『賢者の贈り物』の絵本を選びました。
絵はリスペード・ツヴェルガー
矢川澄子さんの訳によるものです。

 

 

昨日、Amazonから届いた絵本をパラパラめくって、

叔父さんである、次男が言いました。

「ちょっと難しくない?」
「読み聞かせだからいいのよ」と私。
「読んでもらったことなかった…」と息子。
「…」私 絶句。


二人の息子が小さかった時のクリスマス、

バブル真っ只中のクリスマス…
商家の嫁の私は本当に忙しくて、プレゼントを用意するので精一杯、
クリスマスを迎える心の余裕がありませんでした。

その時期は本も読んであげてなかった…

「ごめんね…」


今、ゆとりを持って、孫娘に本を読み聞かせすることができて
幸せだなあと思います。


今年のクリスマスは幸せがいっぱい…になりますように!

 


『賢者の贈り物』の全訳を自由にお使いくださいという素敵なサイトがありました。
よかったら、ぜひ、お読みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

http://www.hyuki.com/trans/magi.html